頸損レベルで使用可能なツーピースベルト

 機会あって何ヶ月かハンモックタイプの吊り具を使用したことがあります。装着時のわずわらしさ、脱着の面倒くささを常々感じていました。自宅での利用に際しては、介助者等も適宜入れ替わる可能性がある為、特により簡単な操作が望まれます。また、毎日欠かさず使う物、本人への負担や介助の軽減も考慮しなければなりません。その為にも、ハンモックタイプの吊り具を諦め、頸椎損傷レベルで使用出来るツーピースベルトの改良を決意しました。

ツーピースベルト


写真のモデルはたぶん健常者でしょう。このように理想的な姿勢とはいかないまでも、頸椎損傷レベルでも何とか使用できるものと思っていた。




【利点】
○ペット上でも、車椅子上でも、最も容易に脱着できるタイプである。
○この姿勢は体幹が直立に近くなり、車椅子で着座する時には適している。
【欠点】
○一般的にこのタイプの吊具は、体幹ベルトによって肩が上がり、脚ベルトが膝の裏に来て臀部が落下した吊り下げ姿勢になりがちである。
○脳性麻痺や頸椎損傷などの重度の障害を持つ方への使用は、安全上にも注意が必要であり、使用不適。

ツーピースベルトの欠点

 ツーピースベルトの欠点である胸を吊る方のベルトによって、肩が上がり、脚ベルトが膝の裏に来て、臀部が落下した吊り下げ姿勢となる。特に頸椎損傷などでは、この傾向が顕著に現れ、高位頸損者や重度障害者の使用にツーピースベルトはあまり適さない。但しバンフレットによると、本人が痛みを感じたり、落下する危険がない場合にはそのまま使用できるとあった。
 がしかし、いざ購入し使用してみると、そのままのツーピースベルトでは全く適応できなかった。腕で身体を押さえるだけの力がないため、身体がずり下がり、脇が痛くて使えなかった。移動の間少しは我慢できるかとは思うが、毎日欠かさず使う物、簡単で楽に使えるに越したことはない。

ホイストを活かす 吊り具の選び方・使い方(三輸書店メルク)

入浴時の使い方
 浴槽が小さい時には姿勢を立てないと、脚が邪魔になり、浴槽内に入らない場合いの吊り具の例。

これを参考にして改良する。
この吊り具こそ、頸椎損傷レベルでのツーピースベルトの使用を可能とする理想的な吊り具なのです。


 そこで、青森労災病院のリハビリ(PT/OT)の先生方のご協力により、頸椎損傷レベルでの使用可能な、ツーピースベルト型吊具を改良することになりました。こういった場合、私達障害者にとって、リハビリサイドによる積極的なる協力は、快適な自宅療養には不可欠なものです。特に担当の佐々木美保先生には数々のご協力に感謝いたします。


 退院を3ヶ月後に控え、自宅療養に入るまでの比較的短期間という制約もあって、購入したツーピースベルトを利用しての改良になりました。リフトに何度も吊り下がり、何度も試行錯誤を繰り返し、安全で使いやすく、最も楽な吊り具を目指しました。

[よい姿勢と悪い姿勢]

比べてみて下さいこの姿勢の違い
既製品のツーピースベルトを使用し、胸ベルト・脚ベルト共に中央部から吊り下げて見ると姿勢は随分と安定したものとなる。

@良い姿勢                                       A悪い姿勢

@
に示すような姿勢が最も快適な姿勢である。また、ハンガーの吊り下げ用フックは、胸ベルトと脚ベルトの架ける位置が違う場合(離れているタイプ)には、上体が倒れ良い姿勢となる。

 
股関節が強く屈曲してしまうと、Aに示すように、脚ベルトが膝の裏に滑り、臀部が落下する。さらに、肩関節の固定力が弱いと腕が上がった窮屈な姿勢になる。この姿勢では、肩関節への負担がより大になる。
 特にハンガーの幅が胸の幅より広いホイストで吊り上げると、この傾向が強く出る。

この問題を防ぐ方法には、次のような方法がある。



○体幹ベルトはできるだけ背中の中央にセットする。脇の下に近ければ近いほど肩に負担がかかり、腕が上がった姿勢になりがちである。
○脚ベルトはできるだけ大腿部中央にセットする。膝の裏に近ければ近いほど、臀部が落下した姿勢になる。

リフト及びツーピースベルトの改良


脚ベルトを新たに作成。
(長さ64p幅18p/ベルト長約50p調整可)
 脚ベルトのベルトの長さを調整することにより、一番楽な吊り下げ姿勢を求めることが出来る。(既存の胸ベルトは、予備としてとって置いている。現在胸ベルトを利用しての第2作目を試作中。)


既製品のツーピースベルトの脚ベルトを改良し、胸ベルトととして使用。

(片側に楕円状の金具環を縫い付けて、もう一方の吊り具の金具を通しリフターの中央のフックに架け
て吊り下げる。)

リフターの中央にフックを取り付ける。

改良した胸ベルトを両側のアームではなく、取り付けたフックに架ける。中央から吊り下げただけで、吊り下げ姿勢は安定し最も楽になる。その方の状態にもよるが、既製品のツーピースベルトを利用して、そのまま中央からリフターに取り付けたフックに架けるだけで、締め付け等は大分軽減される事も分かった。


頸損者特有の欠点を克服

 ちなみに私は、頸椎C5レベルで脇を押さえる力は殆どありません。改良前の胸ベルトをそのまま利用して、中央部からの吊り下げでも痛みは殆ど解消されませんでした。
 
リフターの中央にフックを取り付け、胸ベルトを改良することにより、頸損者特有の欠点を克服できたのです。

@腕の力がないための身体のずり下がりと脇の痛さ。
→胸の吊り下げが脇からではなく胸の中央からの吊り下げになるため、吊り下げによる締め付けが軽減される。胸の中央から吊り下げることで殆ど軽減できる。
A脚ベルトが細いための臀部が落下した吊り下げ姿勢。
→脚ベルトの幅を広くすることで、膝の裏からの吊り下げではなく、大腿部中央に近いところからの吊り下げとなり、より安定した姿勢となる。

 現在、既存の予備の胸ベルトを利用して第2作目を試作中です。新たな改良が出来次第随時レポートしていきますので乞うご期待下さい。ご意見アドバイスどしどしお寄せ下さい。

◆もっとたくさんの色々な状態やレベルでの調査が望まれる。(個人ではこれで精一杯。)
◆長さが固定であるため、胸ベルトのベルトの長さとリフターに取り付けたフックの長さに注意。吊り下げ時に臀部が完全に浮き上がる状態に長さを事前に決定すること。(姿勢については脚ベルトのベルトの長さを調整することにより、楽な吊り下げ姿勢を確保できる。)
◆胸ベルトの幅が一個人専用に作成したため、身体の大きさによる調整ができない。(これが今後の課題。)
◆他にも胸ベルトの吊るもっと良い方法があるのでは。
既製品のツーピースベルトを利用しての改良の為、より発展した改良に踏み込むことが出来なかった。そこで、この調査資料を基に、ある大手介護機器の会社に、高位頸損者や重度障害者等幅広いニーズでの使用可能なツーピースベルトとして話を持ち込んだが、この不景気に新しい商品の研究又は開発にお金をかける余裕はまったくないという返事が返ってきただけだった。私には、使用者が多少不便であれ我慢我慢、たくさん売れて儲かるような製品しか作りませんよと言われたように思えた。
 障害にもいろんな程度があります。現在のリフターの中央にフックを取り付ける、たったそれだけで適応者も随分と増えるはずだし、楽に使えるのだ。このぐらいの改良は、至って簡単に出来ることと思うのだが・・・。
 
大手介護機器の会社の皆様、儲けばかり追いかけずに、もっともっと人に優しい製品作りを目指して欲しいものです。

速報!! 新ツーピースベルト

重度障害者対応ツーピースベルト制作始まる。



 現在、新製品を試作中ですが、ツーピースベルト使用中の方がおられましたら、ご意見及びアドバイスお願いします。改良を重ね、より使いやすい、人に優しい介護用品を目指したいと思います。どしどしお寄せ下さい。